とある春野家
の日曜日。
とある春野家の日曜日――
「千尋くん、部屋、掃除機かけてもいい?」
コンコン、というノックの後に響がドアの隙間からひょいと顔を出して尋ねた。
千尋は正直、とある理由で響には今部屋に入って欲しくなかった。
けれど、かわいい妹の頼みを断れるわけがないだろう!?
千尋がいいよ、入っておいでと言うと響は掃除機をかかえて入ってきた。
「ごめんね千尋君。じゃました?」
「響がじゃまなわけないだろー」
だけど、アレが見つかると少しヤバイかな……
しかし、そう思っている時ほど、見つかって欲しくないものは見つけられてしまうものなのだ。
「何?これ?」
響が手にしたのは千尋お手製『響アルバムNO.16』だった。マズイ。
「『響アルバムNO.16』?もう、また千尋くんってばこんなの作って……。はずかしいじゃんっ!」
響は笑いながらソレをパラパラとめくっていた……が、段々目が笑いから怒りへと変わっていった。
「千尋くん。どういうことか説明してくれる?」
「いや…響…ちょっとした出来心だったんだ……」
「千尋くん!!」
「ごめんよ響〜〜〜っっ!!」
千尋はもはや半無き状態であった……。
* * * * * *
月曜日。
「祥子ちゃん!」
「おはよう、響…って、どうしたの?目、笑ってないし」
「これ、千尋くんにあげたの、祥子ちゃんだって?あと、千尋くんにパパラッチの技術も教えたでしょう!!」
響が祥子の机の上に広げたのは写真だった。
教室にいる響、体操服でバスケをしている響、部活でダンスの練習をしている響……。
ただし、写真の中の響はどれもカメラに気づいていないようだった。
「この写真は祥子ちゃんが撮ったやつだけど、他にも千尋くんにパパラッチされてた写真が大量に昨日見つかったんだから!!もう、すっごいはずかしかったんだよ〜〜〜!」
響が本当に恥ずかしそうな顔をするので、祥子もだんだんすまない気持ちになった。
「響、ごめんね!!千尋さんがどーしてもほしいっ!て言うからさ……それに響の写真、どれもかわいくって……」
そう言うと祥子は響の頭に手を乗せた。
響はそれで少し落ち着いたのか、別に怒ってないよ。ただ恥ずかしかっただけ、というとにっこり笑った。
あー、かわいい。だから撮りたくなるのよねぇ……
祥子はそう思ったが、口には出さず、そのまま響の頭を撫でた。
「本当ごめんね、響。これ、おわび」
響の目の前に、一枚の写真が飛び込んだ。
「堀住とのツーショット。これもパパラッチだけどねでもこの堀住といる時の響の可愛らしすぎる顔と言ったら!!パパラッチせずにはいられないの〜〜」
祥子から受け取った堀住とのツーショットは、とてもよかった。
これは祥子の才能なのだろうか。
写真の中の自分を見つめている堀住の目は……とても甘かった。
あたし、いつもこんな目で堀住にみられてるんだ……
愛してるオーラ出まくりよね、堀住。と言う祥子の言葉に、響はほっぺたが赤く染まっていくのを、もう止めることが出来なかった。
これで全部チャラだな。千尋くんにも帰ったら言い過ぎたってあやまろう。
ありがとう、と祥子に言うと、響は写真をきゅっと胸に抱きしめた。
こうしてパパラッチ事件は膜を閉じたのであった。
……響的には。
* * * * * *
千尋は落ち込んでいた。
昨日、響にパパラッチ写真を発見され、さんざん怒られたあげく、全部没収されてしまったからだ。
せっかく祥子ちゃんにパパラッチの極意を教えてもらったのに……
いや、まて、確かに写真は没収されたが、俺のパパラッチ技術までは没収されていない。
そうだ。これを機に、もっと可愛らしい響を取れるように努力しようではないか!!
そうとも、俺の『響アルバム』計画はまだまだ健在だ!!
千尋はそう考えると、今夜のパパラッチのためにカメラの準備にとりかかった。
響のパパラッチ苦悩はまだまだ続く。
▼ ごめん…ごめんよ…駄作です。本当に。
「パパラッチ」とは軽いノリでの「盗撮」だと思ってください。
そんな変なものは撮ってません!!
千尋兄さん、(きっと)紳士だから…!!
ご飯を食べてるとか、テレビを見てるとか、それくらいです!!(でも大量。)
盗撮は犯罪なので、よい子の皆さんはマネをしてはいけません♪
彼方
Witten by 鬼灯横丁