In the
dream world.
「おかえり結城!!先にお風呂?ご飯?それとも…アタシ?」
「――――!!??」
結城はあせった。あせりまくった。
コイツ、今、何て言った!?フロ?メシ?それで後何って!?
…俺か?これは俺の夢だから俺が言わせたのか!?
目の前の響はキョトンとしている。
「………」
…この選択、続きはどうなる?ふと思った。
夢は一向に醒めない。ならば…少しだけ。少しだけなら進んでもいいだろうか?
「じゃあ……」
⇒
…じゃあ、先ず、お風呂。⇒
じゃあ…ご飯。⇒
じゃあ……響、で。
「…じゃあ、先ず、お風呂」
「お風呂ね!ちょうど今沸いた所だよ!!」
そう言って俺を脱衣所へと押し込んだ。さっきのコトで大量に汗をかいてしまった。手際よくシャツを脱ぎ、上半身裸になった所で。
「あ、待って結城!…私……一緒に…」
「――――――ハイ?」
耳を疑った。冷静に、冷静に考える。
フツー、フロに行こうとしてて…“一緒に”という単語が来たら…次にくる単語は…“入る”。
…一緒に入る!?
――イヤ、そんな、まさか。
響はそういう女性ではない。…これも夢だから!?
俺は一人脱衣所で固まっていると、響が扉を開けて入ってきた。いや、ちょっと待て響!!!
「――ハイ、コレ。わたしのシャンプー、一緒に持って入って…移し変えといてくれない?」
「…………」
そう言って渡されたのは詰め替え用のシャンプー。
「そうだよな……」
そんな訳、ないよな。シャンプー片手に俺は笑うしかなかった。
終わり。
「じゃあ…ご飯」
「ご飯ね!今日はシチューだからすぐ用意するね!!」
そう言って、パタパタと台所に駆け込んで行く。
俺も手伝おうと、後を着いて行った。
「んー、ちょっと塩足りない…かな?」
呟きながら味見をする響はめちゃくちゃ可愛かった。
ピンクのエプロン姿が、とても初々しい。俺の胸はドクンと高鳴る。
そして……少しだけ。
愛しい彼女を独り占めしたくなった。
「響……」
俺は手を響の頬に添えた。俺の意図する事が分かったのか、響が顔を赤くする。
顔を寄せて、甘い味見をしようとしたとき。
「お帰りそして何やってんのかなー堀住クン」
「……千尋っさっ!!」
「アレ、気づいてなかったの?さっき千尋君が遊びに来て、夕飯一緒に食べることになったの」
「そーいうコト☆」
千尋の絶対零度の微笑みに、俺はそれ以上手を出すことは出来なかった。
終わり。
「じゃあ……響、で」
俺は言ってみた。言ってみてしまった。
一体どういう反応が返ってくるんだろう。
普段の響は純粋すぎて…いわゆる…そういうことをほとんど知らない。
俺の想像範囲外だった。
「じゃあ、ハイ!!」
そう言うと、響がキュッと抱きついてきた。…可愛すぎる。
驚くくらい細い彼女の背中に腕をまわして抱き返すと、響がにっこりと笑った。
俺の理性はキレる寸前だった。
「…響、お前意味分かってんだろうな……」
「?分かって…るよ?」
…そこまで言われたら、もう我慢できない。もう、離さない。
「響…」
甘く囁き、続けようとすると、彼女はするりと俺の腕から離れていった。
「…え?」
何で? 俺が聞くと、
「え?何が?結城が『あたし』って言ったら抱きつけばいいって祥子ちゃんが言ってたよ?違うの?」
そう言って首をかしげる。
「…………」
やっぱりこういうオチか。俺はなぜか涙が出そうになった。
終わり。
Witten by 鬼灯横丁